ちょっと変わっている?作品を紹介するコーナー

アイアンキング

 この番組、前番組のシルバー仮面がこけたので、180度方向性を変えなかなか面白い作品となっている。とは言っても、なんだか変なのである。



 まず、主人公側の事を書く前に、敵について述べよう。26話という短い間に、なんと3つの敵集団が登場している。そのどれもが異質なのだ。
 最初はかつて日本を支配していた部族の末裔で、大和民族を恨む不知火一族。巨大ロボットを操り日本再征服を企む。この団体はコスチュームが変。虫みたいなのである。でもこれはまだ良かった。ロボットも結構使えそうな奴だったし。デザインはいまいちだが。
 不知火が壊滅した後に出現したのは大和国家の転覆を謀る独立原野党、またの名をまぼろし兵団。この集団はそうとう怪しい。だって国家転覆を謀って、「俺たちの野望を達成する」とか言っているテロリスト集団なのに、自分たちがどうゆう思想,国家を目指しているのかは全く言わないのだ(そりゃあ○○主義とか実際にあるもの言っちゃあまずいだろうけど)。この集団は見ためは生物風だが中身は機械の怪獣ロボットを操る。これが笑えるのだ。ただ走るだけのマラソン怪獣とか、名前がどうしようもないドジラとか、本当に革命を目指しているのか疑わしくなってくる。
 そして、独立原野党なき後出現したのが、タイタン星から来た宇虫人タイタニアン。前2つが日本限定の地域性が強く、また自分達の思想のために戦っている感じのする敵だったのに、いきなり地球征服を企む異星人である。しかも宇虫人。こいつらは巨大化して宇虫怪獣に変身する。もう目茶苦茶な感じである。
 この作品を始め、様々なドラマ,特撮で印象の強い脚本を書きヒットを飛ばした脚本家、佐々木守のインタビューによると、不知火一族はアイヌや琉球民族のような少数民族を、独立原野党はアラブ・ゲリラや連合赤軍をイメージしたという。やっぱりね。そして、あえて「公安」的な国家警備機構を反対側に置き、国家体制に断固として逆らい続ける人々の存在を描きたかったそうだ。
 脚本家がこうも思い入れているもんだから、敵の存在感は強烈である。様々な理由から(ある程度想像はつくが)最後には異星人という無難なところへ帰結したが、それでも宇虫人も異彩を放っていた。



 さていよいよ主人公サイドだが、国家警備機構最強の密使、静弦太郎(演:石橋正次)が主人公である。しかし、彼がアイアンキングになるわけではない。アイアンキングの人間体は、弦太郎の仲間、おっちょこちょいで普段はなぜ国家警備機構にいられるのかさえも疑わしい男、霧島五郎(演:浜田光夫)である。この二人が敵を追い求め戦っていくのだ。
 五郎が変身したアイアンキング、はっきり言って弱い。なんと活動時間はたった一分。なぜか一分以上戦っているように見えるのはお約束だが。水がエネルギー源であり、戦闘後は早急に水分を補給せねばならず、五郎はよく「水、水をくれ!」と騒いでいた。アイアンキングは巨大で力は結構あるのだが、どうも戦いは下手で、しかもすぐエネルギーが切れてしまいピンチに陥る。しかし弦太郎があまりにも強く、生身の人間なのに巨大な敵に果敢に挑み、アイアンキングを助けてしまうのだ。弦太郎が強いの何のって。中盤までは殆どの敵を弦太郎が倒していた。しかしさすがに生命体である宇虫怪獣が相手になると、ロボットの時のようにコントローラーを奪って自爆させたり、内部機械を爆弾で壊すなどの倒し方は出来なくなるので、とどめはアイアンキングのビームが中心になったが。でもやっぱりアイアンキングの完全独力で倒した敵は殆どいなかったのである。

 そしてさらに変わっているのが、ストーリーである。子供向け番組とはおよそ思えない重厚で、明らかに大人向けのストーリーなのである。しばしば女性がゲストとして登場し、その人が中心となって展開していく。敵側の人物と何らかの関係があったり、弦太郎に好意を持ったり、任務のためには関係ない人を利用したり犠牲者が出たりするのもやむなしという弦太郎の考え方と対立したりと、いろいろと子供にはわかりにくい深い話なのだ。たまにゲスト女性が殺されちゃって、「この人が死んだのは俺のせいだ」と弦太郎が悔んだり、重いのなんのって。
 さらにこの作品が大人をターゲットに含んでいる事の証明として、出演者と次回予告が挙げられよう。私はあまりよくは知らないが、主人公の石橋,浜田やその他各回のゲスト女優も、皆当時としては結構名の通っていた人だったらしい。しかもそれで次回予告で、「ゲストに○○○○を迎え」とか、「石橋,浜田コンビますます快調」とか平気で言ってしまうのだ。フィクション作品なのに演じている人の名前を前面に出すなよ〜。
 さすがにタイタニアン編になると、宇虫人相手にそれまでと同様の女性中心の展開にするのは難しく、女性ゲスト路線はなくなり、代わりに国家警備機構隊員として、レギュラーに藤本典子(演:右京千晶)が加わり、ストーリーも解りやすいものになった。しかしこの時も、次回予告では、「新レギュラーに右京千晶を迎え」とか平気で言っていた。なんか変である。



 この他にも簡単に言葉では説明できない変わっている所がこの作品には多い。これだから70年代特撮は面白いのである。ぜひとも一度見ていただきたい。なんと全話ビデオ化されている(レンタル店で見かける事は殆どないが)。LD化も二度もされたらしい。

 蛇足だが付け足すと、アイアンキングの製作者である津島博士は、キカイダー兄弟の製作者である光明寺博士と酷似している。一説には二人は同一人物で、彼は等身大ロボットで一応の成果を上げた後に名を変えて今度は国家警備機構の資力を得て巨大サイボーグ研究に身を投じたとも言われている。(さらに後には機動刑事も作ったとか…)
 キカイダーの、人間の心を持った等身大ロボットの技術はその後さらに各機関で研究が重ねられ、近年ではウィンスペクターにおけるウォルター,バイクルやジャンパーソンといった傑作も生み出されている。しかしアイアンキングは、やはり無理があったらしく、その後似たような研究は聞かない。アイアンキングは確かに弱い。一分しか戦えない。しかし、人間を素体とした巨大サイボーグは、考えようによっては、いつ帰ってしまうかも知れない宇宙人や、操縦されないと動かないロボットよりも、よっぽど人間にとって扱いやすいし都合が良いのではなかろうか。今後再び研究がなされることを期待する。

アイアンキング

静弦太郎 霧島五郎

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