と言う事で、まずはその本のご紹介を。
『放送禁止歌』
森達也著 開放出版社 2000年
現在テレビやラジオで流されていない、いわゆる「放送禁止歌」についてのドキュメンタリーが、2000年のある日の深夜、フジテレビでひっそりと放送された。私はこの放送は気付かなかったが、この話題に付いては後日「ウォ!チャ!」の猪瀬さんのコーナーで取り上げられたので、知ってはいた。この本は、その番組を制作した森さんが番組に付いて書いた本である。
その番組では描き切れなかった事や、番組を制作し放送するまでに至る過程でのエピソードなどを書いた本、という説明が当てはまるのは前半部分だけで、やがてそこから、話は大きく展開していく。
結論を言うと、放送禁止歌なんてものは存在していなかった。しかし、放送で流れなくなった歌は確かにあった。そこには、問題になりそうな事はろくに議論せず、自分の頭で考えずにとにかく避けるだけで、だんだんタブーを増やしていっている報道人、いや日本人全体の問題があった。そして、そんな「面倒な問題は画一的に避けるだけ」という姿勢への問題提起は、この本の後半では、竹田の子守り歌について考えていくのを通して、話題は部落差別の問題へと収束していくのである。
つまり報道は、開放同盟等からの糾弾を恐れて、部落差別に関係する用語を含んだ歌を、その歌の背景を考えたり、視聴者に説明したりする努力をせずに、ただ単に放送しないようにするだけで済ませていた。歌だけではない。普通に喋る時なども、ただ用語を使わないようし、出演者が使ってしまった場合も、後で画一的なおわびを流すだけで、「どこがどう悪かったのか」をしっかり説明する事を怠っていた。(その問題ではないだろうが、以前、爆笑難問題という番組でも、家森アナが番組に先立って、今まで見た事もないような真面目な顔で、前回の放送で差別を助長する表現があったとわびていたが、どこがどう問題だったのか説明しなかったからさっぱりわからなかった)
一応、私もこうやって不特定多数に対して文を書いている身として、考えさせられる事は多かった。私も、タブーに触れる事はつい避けてしまうタイプなので、この本で訴えられている、「自分の頭で考える」という事は肝に銘じておかねば。
しかし私がそれ以上に驚きまた興味を持ったのは、それこそそのまま部落差別の問題であった。私ははっきり言って、被差別部落について今なお問題にするほどの問題がそんなに残存しているとの認識はなかった。筆者の森さんは最終的には、竹田の子守り歌の発祥地、竹田へと自ら足を運ぶ。ここで氏は開放同盟の人から話を聞いたり、実際に地区を歩いてみたりした。学者・専門家でない者の視点からの取材は、かえって現状をわかりやすく伝えてくれた。
私は、ちょっと衝撃を受けた。私がこれまで育ってきた地は、西に比べると問題の少ない東日本にあり、なおかつ埋め立て地に戦後造成された団地なので、一番そうゆう事に無縁な所であったので、学校で教えられた事もそれこそ歴史上の簡単な事だけだったし、リアルに感じる事なんてなかった。今に至るまでそんなに大きく問題が残存しているとは思ってもみなかった。社会問題についてはそこそこに知っているつもりになっていたのだが、まだまだ知らない事は多かったんだな。まぁこの問題は前述のように、メディアで報道される事が少ないので、知る機会がなかったとの言い訳も効くのだが。
と言う事で、その後、興味を持って、部落問題について、いろいろと本を読んだりしている。一つのテーマについてこうも興味を持ったのって何年ぶりだろうか?意外にも奥が深いようであり、今後も色々と知識を深めていこうと思う。そしていずれは、どこかの現地に行ってみたいとも思う。今はまだ、知識が不十分なので、行っても興味本位で見てしまうだけになってしまいそうで、それは失礼だろう。いずれ、ね。