1999年 極私的坂東三十三札所巡り

 札所巡りというものがある。観音菩薩が安置されている寺院を巡り納経または読経して朱印帳に朱印を頂いていくというものである。もっとも現在では前者を省略しお金を払い朱印を頂くだけという事が多い。やるとしても、読経は勝手にできるからいいが、写経を納めて、それなりの扱いをしてもらうにはさらに料金がいるので、納経まですることはまずなくなっている。私は恥ずかしながら読経すらしていないが。
 札所巡りのコースのようなものは昔から様々な人によって数多く定められてきた。有名なものでは四国八十八札所が挙げられる。そしてもう一つ代表的なものとして、近畿地方の西国三十三札所、関東地方の坂東三十三札所、そして秩父三十四札所、三つを合わせて百観音というものがある。

 私は、1998年の夏と1999年の春に近畿地方を旅して西国三十三札所は完訪を果たした。そして引き続き坂東三十三札所巡りに取り掛かった。自宅が千葉にあるため、日帰りで少しづつ巡り無事に約三か月で完訪を果たすことができた。その行程をごく簡単に記述することにしよう。これについてはガイドブックなども多いので、寺の紹介などは短く(沢山の寺に行っているとだんだん忘れてきてしまっているので…)、行き方の記録などを中心に。


5月7日
 始まりは大学から自転車で30分もかからない 二十九番 千葉寺 へ。実は地元ながら行くのは今回が初めてだった。西国の札所と比べると全然そんな感じを受けない所。観音堂は大きいが扉の中を全くうかがえず冷たい感じ。納経所は仮屋のようでちょっとみすぼらしかった。


5月8日
 土曜日の午後が空いていたので家の近くの京成の駅から船橋へ出て、東武野田線豊春駅下車徒歩25分の 十二番 慈恩寺 へ。距離的には大宮の方なので遠いが、一本でいけるので(途中柏で乗り継がなくてはならないが)簡単に行けた。のどかな所で、立派な寺でやっと札所の気分がした。


5月15日
ホリデーパス使用
 とりあえず夏に入り18きっぷが使えるようになるまでは、ホリデーパスで行ける範囲を回って行くことにした。
 我が家は幸運なことに京成の他にもJR津田沼・南船橋の両駅から徒歩20分程度という便利な場所にある。今回は常磐線を使うので、南船橋から武蔵野線に乗り、新松戸で乗り換えた。新松戸は中電が止まらないのでもう一度乗り換えなくてはならないのでちょっと不便である。
  二十六番 清滝寺 は、当初最も行くのが困難と思われた場所である。なにしろガイドブックには『土浦駅からタクシー30分』としか書いていなかったのだから。しかし、他のガイドブックを立ち読みしたところ、『土浦駅からバス40分、下車徒歩30分』と記述してあるものがあった。
 一安心して行ってみた。早めに出て、8時30分ごろ着いたのだが、なんとその路線は昨年廃止されていた。だから私のガイドブックには載っていなかったのだ。しかし、その途中まで重複する別の路線があった。その最も近い停留所からどの位かかるか案内所で聞くと、徒歩一時間ぐらいと。その位なら大したこと無い、行こうと思ったが、バスが11時頃まで無い。これが来るまで待つのは嫌だ。しかし、その停留所からさらに時間にして10分程度手前のバス停まで行く便が9時すぎにはある。バスの速度はそう速くないので、徒歩にしても30分位足せば済むだろう、と思い、それに乗っていった。
 で、そのバス停から歩き始めたのだが、見事に方向を間違えた。しばらく進んで気付いたのだが、戻るのが面倒なのでそこから寺の方角に向けて適当に歩き始めた。こんなことになるとは思っていなかったので地図は持っておらず、ガイドブックの簡単な図のみが頼み。しばらく色々なところをさまよい、1時間ぐらい歩いて出た所は、なんと幸運にも、前述した最も近いバス停だった。これで帰りのバス(帰りは丁度よい時間に便がある)は安心。そこから40分ほど歩いて、やっと寺に付いた。
 着いたのは11時頃。納経所の奥で、私が普段から土曜日に見ている「土曜一番 花やしき」がついていたのが印象的であった。随分遠くまで来た感じがしていたのだが、まだ関東、まだ午前中なのだと改めて認識した。
 そして、先程のバス停まで戻って、暫く待ってバス乗車。間違えなかった場合の正しい道を通って駅に戻ったのだった。今日はこれでおしまい。武蔵野線に戻るのは面倒なので、一気に上野まで出てしまい京成で帰った(私はこのような遠回りをよくする)。しかし当初思っていたよりはかなり早い帰宅であった。


5月21日
 この日は授業が午前中だけだったのでわりと近場の一か所へ行った。
 成田線滑河駅徒歩20分の 二十八番 龍正院 。成田線は4両編成でなんか悲しい。帰りの列車はちょうど高校生の帰宅時間帯で、彼等のマナーの悪さには閉口した。


5月23日
 サークルの行事で小田急の大和へ行き、その後渋谷まで行ったので、その前後についでに二か所行った。
 京成線で西船へ行き、西船橋駅まで歩き東西線に乗り換え、大手町で千代田線、代々木上原から小田急で座間へ行き、徒歩5分の 八番 星谷寺 へ。朝早く、私が最初の客だった。納経所はまだ鍵がかかっており、インターホンを押して出てきてもらった。
 その後サークルの行事を行い、終わった後は渋谷から地下鉄銀座線に乗り、一路向かうはご存じ 十三番 浅草寺 である。坂東三十三札所では最も有名な所であり、私もよく行く、非常に好きな寺である。何と言っても下町の感じが良いのである。有名なのだが決してお高くとまらず庶民的なものを持っているのだ。仲見世など、まわりの雰囲気もなんとも言えず良い。いつも通りの賑わいであった。


5月29日
ホリデーパス使用
 大仏で有名な鎌倉周辺には、さすがにいくつもの札所が集まっている。一気に進めることができる。向こうの方は三十三カ所のうち若い番号なので、本来は番号順に歩いていく札所巡り、気分的にも若い番号から行きたい。
 この頃から、日中かなり気温が上がるようになっていた。この年は猛暑、この後、いつも暑さに苦しんでいくことになる。
 もちろん津田沼駅から総武快速線である。評価は別れるE217系だが、座れればまあ良いのではないだろうか(土曜日の早朝なので席は空いている)。ボックスシートは足が非常に窮屈だが。
 まずは一端横浜で京急に乗換え、駅名にもなっている 十四番 弘明寺 へ。もちろん弘明寺駅下車すぐである。場所が場所なんで住宅地の中にあり狭く、しかも工事中らしくなんだか落ち着けなかった。
 横浜に戻り再び横須賀線で逗子へ。20分ほど歩くと 二番 岩殿寺 である。ここら辺も宅地化はされているのだが、寺は小さな山の中に有り、のどかであった。
 鎌倉まで移動し、バスに10分乗って 三番 安養院田代寺 へ。バス10分と言っても、駅前を抜けるのに時間がかかっているだけで、距離的には大した事なく歩いて行ける距離であった。損した気分で歩いて駅まで戻った。
 駅から別方向のバスに乗り、10分程度で 一番 杉本寺 へ。こっちは同じ10分でもまあまあ距離はあった。やっと一番札所である。団体客が来たので早々に退却。バスまで結構時間が合ったので歩いた。途中に鶴岡八幡宮があったが、入らなかった。
 鎌倉から江ノ電で長谷寺駅へ。すぐ近くの 四番 長谷寺 は、近くに大仏があることもあり、有名な寺である。だが、それゆえに、商業主義に走っているきらいがあり、冷たい感じを受けた。建物はコンクリート作り。納経所もいかにも仕事でやっていると言う対応だった。浅草寺とはえらい違いである。坂東三十三札所の中では、いちばんよくない感じを受けた寺であった。
 鎌倉へ戻り、千葉まで一本で戻った。


6月13日
ホリデーパス使用
 南西方面の最後、今回は前回よりさらに遠くであるが、東海道方面は便が良いので後のほうで行く寺に比べると大変な感じは受けなかった。
 津田沼から総武快速・横須賀線で大船まで行き、東海道線に乗換え平塚へ。まずはバス25分、下車徒歩2分の 七番 光明寺 へ。のどかな川のほとりにある良い感じの寺だった。ただ曇り空でその後の天候が心配であった。
 平塚駅へ戻り、東海道線で小田原へ。ホリデーパスの範囲外なので別料金である。駅からバスに乗るのだが、小田原駅の繁華街側・バスターミナルは南口なのに、北口に出てしまった。この駅は南北自由通路がないので大回りして南口までなんとかたどり着いた。ここからバス10分、下車すぐの 五番 勝福寺 は、かなり境内が広かったのが記憶に残っている。小田原までの帰りのバスは、車体が大きく、内装もかなり豪華で、もしかしたらかつて観光バスに使われていた物かもしれない。
 小田急で本厚木まで行き、バス20分、下車徒歩10分の 六番 長谷寺 へ。長谷寺と言う名前の寺は坂東三十三札所の中に三つあるのだが、ここと四番は「はせでら」と読み、十五番は「ちょうこくじ」と読む。本厚木駅に着いた頃からついに雨が降ってきてしまった。しかしそれほどひどくはならず、戻ってきたときには止んでいた。
 隣の厚木駅まで乗り、相模線に乗り換えた。相模線用の205系は独特の前面デザインが目を引く。しかし思ったよりも乗客が少なかった。単線区間も多く、利用促進による複線化を訴える地元団体の看板が目に付いた。茅ヶ崎からは東海道線、横須賀・総武快速線を乗り継いで戻った。


6月20日
ホリデーパス使用
 神奈川方面の後は北の方に向かう。まずは南船橋から武蔵野線で南浦和へ。常磐線同様、南浦和も東北線の中電が止まらないので、浦和まで一駅だけ京浜東北線で行く。面倒だ。浦和から宇都宮まで行った。
 ここからはバスに30分乗り、下車後徒歩2分の 十九番 大谷寺 を目指す。JRの時刻表にこの路線の時間は載っていたのだが、かなり便が不便であることがわかっていた。その日のうちにもう一か所に行くには、バス停で降りた後、その10分後に折り返してくるバスに乗らなければ次のバスは2時間以上後になってしまう。従って、寺へ行ってお参りをして朱印を押してもらい、直ちに戻ることになったのだ。せっかく遠くまで行ったのにそんなに急ぐのは勿体ない、もっとゆったり行けば良いのにと言う人もいるのだが、私の第一目標はあくまで寺を回ること。そうそう資金も時間もないので、出来るだけ効率的に回らなくてはいけないのである。
 バスが時間より早く着いたので、実際には15分ほど滞在し、折り返す。帰りは東武宇都宮で降りて、益子行きのバスに乗車。益子駅から徒歩1時間の 二十番 西明寺 を目指した。ここものどかな寺であった。益子へ戻り、真岡鐵道で下館へ。ちょうど真岡鐵道ではSLを運転していたのだが、この日はこの時点で帰るのにぎりぎりのお金しか持っておらず、特別料金が出せないので断念した(でも実は予約が一杯だったようだ)。
 水戸線で下館から小山へ。再び東北線に乗って上野から京成で帰った。


7月24日
ホリデーパス使用
 夏休みも近付いた。ここしばらくは忙しかったのだが、一段落付き久々の出発である。
 常磐線方面なので、前と同様に、南船橋から出発、新松戸、取手で乗換え土浦まで行った。まずは筑波神社こと正式名称 二十五番 大御堂 へ。ここへ行くには、途中でバスの乗換えが必要で面倒である。
 最初のバスは、土浦駅から筑波駅まで。筑波駅といっても、今は鉄道の駅ではない。廃止された筑波鉄道の駅の跡で、今はバスターミナルとなっている。ここは10年ほど前に、今回同様に筑波山に行くために訪れた事があるのだが、その時はまだ廃止からそうたっておらず線路や駅舎が残っていた。10年も経つとかなり変わり、駅舎は立派なバス営業所に建て替えられ、線路も撤去されていた。しかしまだホームはあり、広告などもそのままになっていたり、廃駅の雰囲気は一杯である。ここから筑波神社までのバスに乗り、大御堂へ行った。さらにロープウェイに乗れば山頂の方へ行けたのだが、あまり時間もないので今回は行かなかった。
 バスで筑波へ戻り、そこから水戸線岩瀬駅行きのバスに乗車。途中の雨引観音入口で降りて徒歩30分の 二十四番 雨引山楽法寺 へ。ここは、清滝寺と同様に、「岩瀬駅からタクシー10分」としか書いていなかったのだが、調べた結果バスがあり、また今回はちゃんと営業していたので、問題なく行くことができた。
 次のバスで岩瀬駅へ出て、水戸線、常磐線を経由して帰った。